ヴィクトリア女王も愛したウォッチメゾン、PATEK PHILIPPE(パテック フィリップ)ってどんなブランド?


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1839年の創業以来、スイス・ジュネーブで180年以上の時を紡いできた世界屈指の高級時計メゾン、パテック フィリップ(PATEK PHILIPPE)。家族経営を貫くジュネーブ唯一の独立系マニュファクチュールとして、「世界最高の時計をつくる」という理念を追求し続けてきました。複雑機構に数多くの革新をもたらしてきた名門中の名門として知られますが、最上級の手仕上げと装飾技巧を融合させたタイムピースは、その美観においてもスーパーコピー時計界の頂点を極めています。その卓越性のひとつは、どんなに古いモデルでも修理可能であると約束していること。時代に流されない価値を生み出す至高のメゾンの歩みと、不朽の名作「カラトラバ」をはじめとする珠玉のコレクションの魅力に迫ります。

「世界最高の時計をつくる」ことが使命。完全なるマニュファクチュール、「パテック フィリップ」とは?
創業者:アントワーヌ・ノルベール・ド・パテック、フランソワ・チャペック
創業地:スイス、ジュネーブ
創業年:1839年


1839年にパテック, チャペック社を設立した、ポーランド出身のアントワーヌ・ノルベール・ド・パテック(左)。後にフランス人時計師ジャン・アドリアン・フィリップ(右)と出会い、1951年に社名を「パテック, フィリップ」に改称
■創業当時のエピソード
1839年、美術愛好家でありポーランド出身の亡命貴族アントワーヌ・ノルベール・ド・パテックと、同じくポーランド人の時計師フランソワ・チャペックが、ジュネーブに時計工房パテック, チャペック社を設立。これが現在のパテック フィリップの始まりです。

1844年、パテックはパリ産業博覧会で、フランス人時計師ジャン・アドリアン・フィリップと運命的な出会いを果たします。リュウズによる巻き上げ・時刻合わせの機構の考案者であり、発明の才にあふれたフィリップとパテックは意気投合。翌年には、チャペックに代わってフィリップが技術者に就任し、フィリップはパテック社の共同経営者に。

やがて1851年には、「世界最高の時計をつくる」という社是の下、二人の姓を組み合わせた「パテック, フィリップ」と社名を改めました。


ジュネーブのレマン湖から流れるローヌ川のほとりに建つ、パテック フィリップ初期の時計工房(右側の建物)


創業以来の顧客名簿を大切に保管


すべての時計は厳密に記録され、顧客台帳は数百冊以上に
■ブランドの転機
パテック, フィリップ社として新たなスタートを切った1851年、ロンドン万国博覧会に世界初となる鍵なし懐中時計を出品し、金賞を受賞。小さな鍵のような道具を用いてゼンマイを巻き上げる懐中時計しか存在していなかった当時、従来の不便な「鍵巻き式」に終止符を打つという偉業を達成したのです。

フィリップが発明した、ゼンマイの巻き上げと時刻合わせをリュウズで行うという機構を駆使し、時計を飛躍的に進化させました。以降パテック フィリップは、この革新的な機構を生かしながら次々に傑作を創造し、栄光の歴史を歩み出します。

ロンドン万国博覧会の出展作品のうち、ブルーエナメルを施した懐中時計は、若きヴィクトリア女王に献上されました。それはブローチのようにドレスに留めることができる可憐なデザインで、裏蓋にダイヤモンドで花モチーフが描かれたもの。女王は会場に飾られていたエナメル装飾の別のペンダントウォッチもいたく気に入り、自ら購入したという逸話が残されています。

品格にあふれたパテック フィリップの懐中時計は、ヴィクトリア女王を筆頭に王侯貴族をはじめ、チャイコフスキーやワグナー、キューリー夫人、アインシュタインなど、稀代の芸術家や科学者たちにも愛されていたともいわれています。

1851年、ロンドン万国博覧会でヴィクトリア女王に献上された、世界初となるリュウズ巻き上げ式の懐中時計
懐中時計から腕時計へと進化する過程においても、メゾンは重要な役割を果たします。ジラール・ペルゴ1868年になると、スイス最初のエポックメイキングな腕時計を制作。それは、ハンガリーのコスコヴィッチ伯爵夫人のために手がけたゴールド製のブレスレットウォッチでした。

懐中時計しかない時代、時計を身につけて楽しみたいという進歩的な女性の願いを叶えるため、極小のムーブメントをつくり壮麗なブレスレットに仕立てることに成功。以後メゾンの技術力と比類なき創造性は、世界中の女性たちの心をとらえていきます。

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1868年に制作されたスイス初となる腕時計。ハンガリーのコスコヴィッチ伯爵夫人の愛用品
女性たちからのより複雑な機械式時計への熱望が高まると、1916年、時刻を鐘の音で知らせるミニット・リピーター機構を搭載した、メゾン初のレディス・コンプリケーションを発表。男性用リピーターウォッチに先駆けて婦人用複雑時計を開発していた驚くべき歴史が、女性たちと歩む名門メゾンの美意識を物語ります。

このように世界的な名声を築いていたものの、1929年の世界大恐慌により業績が悪化。1932年、文字盤製造会社を営んでいたジャン・スターンとシャルル・スターンの兄弟にメゾンの経営権が移譲され、パテック フィリップ社は現在に至ります。

創業家からスターン家へ転換した後も、家族経営による独立したマニュファクチュール体制は健在。親会社や投資先の声に左右されることなく、真に自由な創造性を追い求め、「世界最高の時計をつくる」という創業者の意志を現代に継承し続けています。

■ブランドのアイコン・定番アイテム
「カラトラバ」


1932年の誕生以来、究極のシンプル・エレガンスは不変。20世紀を象徴するラウンド型ウォッチの真髄「カラトラバ」
経営体制の変更後、1932年に発表された意欲作こそ、時計史に燦然と輝く永遠の名品「カラトラバ」。アールデコ様式の流行が続いたのち、シンプルデザインへの回帰をいち早くとらえ、シンプリシティに徹したラウンドウォッチの原点を世に送り出しました。

その研ぎ澄まされた造形美は、「機能がフォルムを決定する」という、ドイツで起こった芸術運動バウハウスの哲学の影響を色濃く受けたもの。初代カラトラバ「Ref. 96」において特徴的な立体的バーインデックスとドフィーヌ型針、抜群の視認性を備えながらも控えめなエレガンスを放つ意匠は、今に脈々と受け継がれています。

「Twenty~4 」


現代女性の日常のあらゆるシーンにマッチする名パートナー。左/レクタンギュラー型の初代「Twenty~4」 右/美貌のラウンド型へと進化した「Twenty~4 オートマチック」の最新作(2021年7月現在)
レディスの代表作は、1999年の登場から20年以上を経ても色褪せない、レクタンギュラーケースの「Twenty~4」。ステンレススティールの現代性とダイヤモンドのエレガンスを融合させた先駆け的存在です。アクティブな現代女性の24時間に寄り添い、デニムからドレスにまで合う万能ウォッチとして、ロングセラーに君臨します。

2018年には、そのデザイン哲学を踏襲したラウンド型の本格機械式「Twenty~4 オートマチック」が誕生。いずれのモデルも、手作業でポリッシュ仕上げされたジュエリー感覚のブレスレットが、セカンドスキン感覚の抜群のつけ心地を誇ります。

■ブランドの真価を象徴する独自の品質基準
時計制作技術のパイオニアとしてたゆまぬ革新を続け、100以上の特許技術を創出し、傑出した技術力で200を超えるモデルを生み出してきたパテック フィリップ。そのクオリティには、他に類を見ないほど厳格な基準を設けています。

かつては、最高級スイス時計の証しとして、“ジュネーブ・シール”を取得していましたが、2009年以降は、これを上回る独自の品質基準として“パテック フィリップ・シール”を導入。ムーブメントのみならず、ケースや文字盤、指針などあらゆる部品に極めて厳格な基準を課し、制作から仕上げに至るまでの全工程をすべて熟練職人の手作業で行っています。

また、“パテック フィリップ・シール”は、すべてのタイムピースのアフターサービスと修復を保証するグローバルな品質ラベルでもあります。創業当時より培われたあらゆる技術と知識の蓄積を誇るメゾン。100年以上が経過したようなどんなに古いモデルでも修理可能な信頼性から、何世代にもわたって受け継いでいける特別な価値を宿しているのです。


2009年に導入された最高品質の証し、“パテック フィリップ・シール”
■現在の社長とブランドの新たな取り組み

1932年より4代にわたりメゾンを率いるスターン家。現名誉会長のフィリップ・スターン(左)と、息子で現社長のティエリー・スターン(右)
現在のパテック フィリップを指揮するのは、スターン家4代目として2009年に社長に就任したティエリー・スターン。その父であり、1993年より経営を率いた現名誉会長のフィリップ・スターンとともに、1996年の本社工房移転や2001年のパテック フィリップ・ミュージアムの開設、パテック フィリップ・シールの制定などを実現してきました。

そして、2015年から進められてきた本社工房拡張工事が、2020年初頭についに完了。ジュネーブ郊外のプラン・レ・ワットに構える新工房が落成し、去年の春より本格稼働が始まりました。

今でこそ、さまざまなウォッチブランドの本社工房がひしめき合うプラン・レ・ワット。かつては農業用地であった彼の地に、当時の社長だったフィリップ・スターン主導の下、パテック フィリップが時計ブランドとして初めて巨大な工場施設を建設したのは、1996年のことでした。

それまでジュネーブ各地に点在していた生産設備をひとつ屋根の下に統合し、品質確保することが目的でしたが、やがてマニュファクチュールの急速な成長には小さすぎる結果となり、本社工房の拡張が押し進められました。


新たなジュネーブの拠点、2020年に落成した新工房「PP6」
また、ジュネーブが誇るウォッチメイキングの伝統の継承者として、パテック フィリップは昨今、装飾芸術にハイライトを当てた「希少なハンドクラフト」コレクションを発表しています。

七宝(クロワゾネ)装飾や手彫金、木象嵌など、古来よりジュネーブに伝わるハンドクラフト技巧を次世代へつなぐことに貢献するため、毎年数十点の珠玉のユニークピースを世に送り出しています。その美しさと希少性は芸術作品そのもの。まさしくパテック フィリップの目指す、時代を超越する永続的な価値を備えています。


ハンドエングレービングによるギヨシェ装飾とクロワゾネを駆使。ミニット・リピーターに飛翔するツバメの姿を描いた、「希少なハンドクラフト」コレクションのマスターピース
女性とともに歩んできた歴史を背景に、いつの時代も最高峰のレディスウォッチを創造してきたパテック フィリップ。ブランドシンボルであるユリの花言葉のごとく“純粋”に、時計づくりに真摯に取り組むメゾンのスピリットは、現代をしなやかに生きる女性たちの時を賛美し続けます。